LEDベースライトの選定について

LEDベースライトの選定では、明るさ、色温度、そして、器具単体の価格は検討しているが、トータルコスト、空間デザイン、安全性等の観点からも検討したいというご要望が増えてきました。

LEDベースライトへの要求は多様化し、例えば、

・最適な明るさで眩しさは抑えたい

・器具数を最小化したい

・施工工数を削減したい

・設計変更に柔軟に対応したい

・メンテナンスを最小限にしたい

・地震に対する安全性を考慮したい

・天井空間をスッキリさせたい

等です。

本稿では、LEDベースライトの多用な要望に対し、最適なベースライトを選定するために、これまで見落としがちな重要ポイントを解説します。

1.LEDベースライトとは

 

ベースライトとは、オフィス、学校、病院、ホールなど施設で広く使われる天井照明で室内全体を広く照明する目的で使われます。室内全体をできるだけまんべんなく照らすように、室内に極端な明暗差がないように配置します。光源にLEDを使ったベースライトをLEDベースライトと言います。

 

1-1.シーリングライトと施設用ベースライトの違い

シーリングライトも、天井照明で室内全体を広く照明する目的で使われますが、シーリングライトはローゼットなどを介して設置するのに対し、施設用ベースライトは系統配線を直接照明器具に接続して天井施工により設置します。また、シーリングライトは一般人でも取付けられるのに対し、ベースライトの配線には電気工事の資格が必要です。このため、家庭用の天井照明にはシーリングライトが普及しています。

図1.1 シーリングライトと施設用ベースライト

 

1-2.LEDベースライトの種類

LEDベースライトは、設置方法と形状から大きく分類されます。設置方法では、天井に照明器具を埋め込む「埋め込み型」、天井に直付けする「直付け型」、天井下地から吊り下げる「吊り下げ型」の3つに大別されます。 形状については、長方形型と正方形型に大別され、長方形型は「ライトバー」、正方形型は「スクエア」とも呼ばれています。

2.LEDベースライトの特長とメリット

LEDの大きな特徴の一つは、寿命が蛍光灯より長いことがあげられます。一般的な蛍光灯の寿命は6,000  時間から13,000時間ですが、LEDは40,000時間が一般的です。 1日10時間点灯させたとして、蛍光灯は約1年6カ月から約3年7か月、LEDは約10年です。しかも、LED照明の寿命は、初期の明るさから70%の明るさに低減するまでを寿命としています。つまり、LED照明の寿命は点灯しなくなるということではありません。

次に、蛍光灯に比べて省エネルギーで、一般的には約30%以上の消費電力が削減できます。

その他、蛍光灯には紫外線が含まれていますが、LEDには含まれていないので、虫を寄せにくく、メンテナンスの回数が軽減できる、耐衝撃性も高く使い勝手が良いなどのメリットもあります。

3.LEDベースライトで着目する機能・仕様

LEDベースライトは、用途や目的に応じて、機能・仕様から最適な器具を選択することが重要ですが、ここでは、見落としがちな機能・仕様について説明しています。

 

3-1.光束/重量

通常のLEDベースライトの仕様表には、光束(ルーメン:lm)が記載されています。

光束とは、消費する電力に関係なく、明るさをどれだけ出すことができるかを表し、「人が感じることのできる明るさ*1(光の量)」=「光束」です。

(*1:人が感じることの明るさの光源とは、光の波長がおおよそ380nmから780nm の範囲の光で可視光線といいます。)

光束が高いほど明るくなりますが、重量や体積も大きくなるため、施工性や安全性を考慮するには、 単位重量あたりの明るさ、すなわち、光束/重量 (lm/kg)が重要な指標となります。

光束/重量(lm/kg)は、一般的な仕様表に表示されない項目ですが、この値が高いほど軽くて明るいベースライトであり、同じ明るさであれば軽いベースライトになりますので、安全性や施工性がよいベースライトということになります。 さらに、明るいベースライトは、器具数を削減できることは言うまでもありません。

 

高出力LEDベースライトの光束/重量の分布

図3.1 高出力LEDベースライトの光束/重量の分布

 

3-2.器具の高さ

器具の高さも、直付けベースライトにおいても、埋込み型ベースライトにおいても、施工性や井空間デザイン等に影響する重要項目です。

埋込み型では、器具の高さが高いと、野縁を切断する等、照明器具と天井下地材との干渉を避ける施工が必要になります。また、天井裏での空調器具配管との干渉を避ける施工も必要になったりします。このように、照明器具の高さは、埋込み型ベースライトにおいては、施工性=施工コストに影響します。

一方、直付け型ベースライトにおいては、照明器具の高さがそのまま天井から突き出ている高さになるため、高さが高いと照明器具の天井面からのでっぱりが大きくなり、天井空間デザイン的に好ましくない状態となってしまいます。

埋込型の野縁切断施行と直付け型のでっぱり

図3.2 埋込型の野縁切断施行と直付け型のでっぱり

 

3-3.発光面輝度の均一性

LED光源はレーザーにも使われるように直線性が強く、直接目に当たると眩しい光となります。そのため、照明器具では、レンズでLEDの直線光を発散したり、透明板の中で拡散することで眩しさを抑えたりしています。この場合、できるだけ照明器具発光面の輝度(cd/mΛ2)を均一にすることで同じ明るさでも眩しさを低減することができます。

LED光源の直線性と発光面輝度の均一性

図3.3 LED光源の直線性と発光面輝度の均一性

 

3-4 .安定器(AC/DC電源)の交換性

JIS C 8105-1-2017 や 電気用品安全・技術基準によると、照明器具の平均耐用年限が40,000時間、安定器(AC/DC電源)の寿命劣化が進むのは実質的に30,000時間くらい(周囲温度30℃の場合)から摩耗故障期にはいるとされていますので、安全性を考えると安定器(AC/DC電源)の交換時期はベースライトの交換時期よりも短いことを考慮すると、ベースライトの安定器(AC/DC変換器の交換が可能であり、また、交換しやすいことが望ましい構造です。

 

3-5.調光器具との接続の有線/無線

調光をする場合には、調光機能付き照明器具で、調光器とベースライトとの有線/無線による通信が必要になります。施工性を考慮すると無線式調光器とすることで、配線施工を省くことができ施工コストの低減につながります。

4.直付け型と埋込型の比較

1-2項でLEDベースライトの種類について形状と設置方式について説明しました。このうち形状は主に空間デザインが問題であるのに対し、設置方式は、施工性(施工コストや施工時間)とデザインに影響する重要な問題です。設置方式は3つに大別できると説明しましたが、多くは埋込型と直付け型であり、これら2つについて、施工性と空間デザインの観点から比較します。

 

4-1.施工性の比較

埋込型では、その設置のために、主には、つりボルト加工とそのための下地仕込み、 天井開口と開口補強、天井材の切断 が必要になります。

直付け型では、器具取付けピッチに下地材を仕込み、器具をビスで取り付けるだけで設置できます。

また、建築・設備設計では、度々設計変更が実施され、それに伴い、ベースライト配置の変更が必要となり、埋込型では下地仕込み、天井開口と開口補強、天井材の切断などの再設計をしなければならなりません。一方、直付け型では、下地材の仕込みの再設計だけとなります。

さらに、埋込型では、ダクトや空調配管、水道配管の天井懐のおさまりを再設計する必要がありますが、直付け型ではそれらおさまり再設計は必要ありません。

 

4-2.空間デザインの比較

埋込型では、天井面と照明器具をほぼ面一で設置できるので、スッキリとした天井にすることができます。

一方、直付け型では、照明器具が天井面から突き出てしまいます。

 

5.まとめ

LEDベースライトの従来見逃しがちな重要な選定ポイントとして、光束/重量(lm/kg)、器具の高さ、発光面輝度の均一性、安定器(AC/DC電源)の交換性、調光器との接続が有線か無線かについて、それぞれの観点から説明しました。また、直付け型と埋込型の2つの設置方式について、施工性と空間デザインの観点からそれぞれの特長を説明しました。

LEDベースライトを選定するには、一般的な仕様に加えて、施工性、安全性や、空間デザインのよいベースライトを選ぶ観点が重要です。具体的には、光束/重量(lm/kg)が高く, 器具高さが低い、安定期(AC/DC電源)の交換性がよい、均一性が高い、直付け型のLEDベースライトが望ましいといえます。

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